映像演技の中のルーシッド・ボディ:ショートフィルム『Sticks & Stones』

受講者から「ルーシッド・ボディをどのように演技に使っていくのか」と質問されることがありますが、是非この作品を参考にしてください。ルーシッド・ボディを通して知り合った友人でありコラボレーターのRoss Barronによる4分ほどのショートフィルムです。
https://www.youtube.com/watch… 

ベトナム戦争に徴兵されることになった若者が、夜中にアルコール依存の母親を置いて旅立つ際の弟とのシーンです。全編英語ですが、たとえ言葉がわからなくても心に響くものがあると思います。

私はこの夏に日本のワークショップでもやった「スリーキャラクター」(レベル1)を応用しているのだと思ったのですが、本人曰く「プッシュ・プル」(レベル2)からアイディアが生まれて創作されたそうです。トレーニングで培ったものが上手く融合されていてとても力強い作品になっています。

このようにルーシッド・ボディには素晴らしいエクササイズがたくさんあります。ベーシックコースの最初の数日はとにかく自分の持つ「インストルメント(身体)」を知り、チャクラを個別に体験していくことを重点的に行うので、このトレーニングがどこに向かうのか、「リアルな」演技に辿り着けないのではないかと不安になるかもしれません。

心配しないでください。

レベル1の後半からは徐々に前半で学んだツールをキャラクター作りに応用していく術を学びます。レベル2ではさらにアーキタイプを使った役作りやシーンスタディへの導入となるパートナーとの関係性等について学んでいきます。

世の中には様々な演技トレーニングがありますが、出発点が頭であっても身体であっても、最終的に目指すのはリアルな人間の心の機微を演じることです。表現しているものが俳優にとって真実であればあるほど、観る人の心に響くからです。

12月のワークショップではスリーキャラクターも教える予定です。レベル1を受講した人が増えてきたらレベル2も開講できるようになります。日本の俳優の皆さんと全てのカリキュラムをシェアできる日がくるのを楽しみにしています。

12月のワークショップの詳細は以下をご覧ください。
https://www.lucidbodyjapan.com/in-nyc-japanese

持続可能な演技 - 心の曲芸師

今日のドロップインクラスでは第4チャクラ(ハート)に注目しました。第4チャクラを取り上げたクラスを締めくくるサークルは、いつもよりも少しだけ温かい空気が流れる気がします。

最後のディスカッションでも話をしましたが、研修の課題図書の中に「An Acrobat of the Heart (Stephen Wangh 著)」という本がありました。俳優の仕事、演技をすることというのは心(ハート)にアクロバティック(曲芸)をさせるようなものという比喩は言い得て妙で大好きです。

アクロバットが曲芸をこなした後に怪我一つなく無事に着地するように、架空の世界で様々な感情を大きな振れ幅で表現した後に安全に日常生活に戻り、それを何度でも自在に繰り返すことができるのは俳優の大切なスキルの一つだと、私は信じています。

ルーシッド・ボディを通して伝えたいことはたくさんあるのですが、「持続可能な演技」もその一つです。自分の心を怪我させずに己の深い「真実」をさらけ出せる、息の長い幸せな俳優になりましょう。

来週のドロップインも担当します(英語ですが)。
90分のドロップインクラスではコンセプトの紹介、準備運動をした後に一つのチャクラを取り上げてみたり、チャクラを使ったキャラクター作りを「垣間見て」みたりします。
(内容はその日の人数や顔ぶれを見て決めます)

年末の日本語ワークショップも募集中です。
https://www.lucidbodyjapan.com/in-nyc-japanese 
是非奮ってご応募ください。
ご友人、お知り合いへのシェアもお願いします!

ルーシッド・ボディの概要

ルーシッド・ボディは、モダンダンサーだったフェイ・シンプソン(Fay Simpson)によって考案された俳優のための実用的な演技トレーニング法です。心と身体は一体であるという考えに基づき、俳優が己を理解し、人間観察の直感を養い、役作りに応用することで演技の幅を広げられるように構成されたカリキュラムです。

ルーシッド・ボディが目指すのは、頭で考えた上辺だけの「型にはまった演技」ではなく、心と身体の真実に耳を傾けてそれを表現する術を学ぶことです。そのためにまずはヨガ等を基にした準備運動で、俳優自身が持つ「インストルメント(音楽家にとっての楽器のように、俳優にとってのインストルメントは己の身体です)」を知る作業から始めます。ここでの準備運動は「骨や筋肉で構成される身体」のストレッチに留まらず、「感情で構成される身体」のエクササイズでもあります。

ルーシッド・ボディを特徴づけるのは、7つのエネルギーセンター(チャクラ)に注目した人間の行動パターンの観察とキャラクター分析です。頭ではなく身体が出発点であることから演劇学校ではムーブメントのクラスとされることが多いのですが、心理学者カール・ユングの提唱したペルソナやシャドウ、キャロリン・メイスのアーキタイプの概念を基にした人間理解、マイケル・チェーコフのサイコロジカル・ジェスチャーを取り入れたエクササイズ等を通し、よりリアルで人間らしい複雑さを備えた役作りを学びます。

また、シーンスタディで必要となる「全身で聞く力」を養うためのエクササイズは、しばしば受講した俳優から「マイズナーテクニックの身体版」とも評されます。

演劇の本場NYで生まれたルーシッド・ボディは、過去20年間で演劇の名門校であるイェール大学大学院、ニューヨーク大学大学院の他、マイケルハワードスタジオ、ステラアドラースタジオ等、数多くの演劇プログラムで採用されてきました。近年ではNY、ロンドン、LAの他、ブラジル、ベルリン、メキシコ、ローマ、フランス、中国など世界各地で認定講師によるワークショップが行われています。