演技の世界の扉を開く前に

みなさんには自分なりのWarm-upがありますか。

ルーシッド・ボディのクラスはいつもWarm-upから始まります。これは肉体のみでなく、感情と記憶の準備運動でもあります。ルーシッド・ボディの創始者、フェイ・シンプソンは瞑想の時間と捉えてもいい、と言っています。

演技の基本は相手役や与えられた状況(英語でGiven circumstanceと言います)から投げられたボールをしっかりキャッチすること、それに反応することですが、そこで大切なのが「聴く力」です。そしてリスニングスキルの第一歩は、自分自身の心と身体のメッセージが聴けることです。

身体を動かすことで心がどのように動くか、どんな景色や記憶が浮かんでくるか、自分の内面に耳を澄ませましょう。浮かんできたものをジャッジせずに、声や息にのせて外の世界へとつなげましょう。

私は心と身体と声をつなぐこと、内面と外界をつなげることがWarm-upの役割だと思っています。

ルーシッド・ボディのクラスに限らず、ほとんどの演技クラスは準備運動やルーティーンで始まると思います。その中から自分に一番効果があるものをみつけましょう。立ったままでできるもの、椅子に座ってできるもの等、何が適しているか、何が必要かは人それぞれです。

私にも舞台に上がる前に必ず行う一連のルーティーンがありますが、それはルーシッド・ボディのクラスで行うWarm-upとは違います。大抵の舞台袖ではヨガマットを敷いて動き回ることはできないので、時間や場所の制限があっても自分をベストの状態に持っていけるルーティーンを、今までに受けた様々なクラスから自分なりに組み合わせたものです。

 心と身体のメッセージが聴けていますか。

 そのメッセージと呼吸・声が一致していますか。

 自分の内面と外界がつながっていますか。

私の演技の師の一人、マイケル・ハワードはよく「自分なりの演技メソッドをみつけなさい」と言っていました。ルーシッド・ボディを含め様々なトレーニングを受ける中で、みなさんが自分の「インストルメント(楽器)」をベストな状態に持っていくことができるルーティーンをみつけられることを願っています。