「Acting is easy.」

"Acting is easy. The hard part is becoming an artist -
which means using more than just the comfortable part."
(演じるのは簡単だ。難しいのはアーティストになること、
つまり自分が心地いいままではいられないような部分も使うことだ)
by Michael Howard

 

2003年から2004年までNYマイケル・ハワード・スタジオのコンサーバトリーに通っていました。つい先日、その頃のレッスンノートをみつけて懐かしくなりました。

冒頭は書きとめられていたマイケルの言葉の引用です。今読み返しても心に響きます。

私は、人は誰しも天性の才能などなくても演技はできると信じています。ただ、嘘のない演技をするためには、きちんとしたトレーニングを通して、普段は他人に見せないような、或いは自分でも気づいていなかったような「ドロドロとした」感情や記憶を掘り起こす作業が必要となります。さらにそういったプライベートな部分をキャラクターに投影して公衆の面前で表現しなければなりません。このプロセスに喜びを見出せるか否かという点において、演技をすることの向き不向きはあると思います。

「これから演技の勉強をすればするほど、いかに演技をする必要がないかがわかるはずだ(The more you study acting, the more you’ll understand you don’t need to act.)」

これはコンサーバトリー初日にディレクターだったラリー・シンガーが私達に言った言葉です。当時は深く理解できませんでしたが、演技の勉強をするにつれて「ここから先は何をしても正解」とも言えるような状態があることを知りました。その状態では「役としてその瞬間を生きている」ので、頭で演技をする必要はなく、直感を信じて反応しているだけでいいのです。

演技の勉強とは、とどのつまりは自由に自分をその状態に持っていく術を学ぶこと、人前で「よそいきの自分」以外を見せても大丈夫だという安心感を身につけることだと言えるかもしれません。